透明色

悲しんでいるわけではない
泣き疲れたわけではない
少し目が窪んできただけだ
また少し肉体が削がれただけだ
ぼくは黄昏に声をかける
それから旅立ちに微笑む
夜が巣に帰っていく
白々しく呼吸するので
清潔な文字が
透明色に創り上げられていく
そんな様を嘲笑い
醜くなったもうひとつの自分に
まるごと塗りつぶせば
仮の存在が蒸発していく
まるで潔癖な青のように
それ故に深くなりすぎた青のように
夜ごと包まれて
ぼくはまた酔うことができる
何者でもない
もうひとつの輩に笑われながら
想像すら届かない世界へと
右足から踏み込んでいく