秋の風はさよならの合図

ベッドのうえに横たわり
一晩中見つめた天井を仰ぎながら
今なにを見ようとしているのか
どこにいっているのかわからなくなっていた
秋の風は金木犀の香りを運んできた
モンシロチョウが窓のむこうを過ぎていく
また秋の風が部屋に流れ込む
パンとシリアルを食べ
コーヒーをからだに巡らせるように飲んだ
もう陽が傾きはじめた
公園には子等の声
路地には午後のまどろみ
まだ一日は続く
だれがいてもいなくても
帰れないあの日に向かって
またさよならと口ずさむ
ただそれだけのこと
あしたはきのうで終わったのだから
あのときと同じ
秋の風が吹いている