音のない叫び

だれもが叫んでいる
声を超えて叫んでいる

だれにも聴こえない
空気さえも震えない

砂漠の熱をかすめ
氷山の上を過ぎ

放浪者は市場で傘を買い
住民は庭で花に水やりを

船乗りは煙草をふかし
農夫は握り飯を食らう

どこにも留まらず
どこからも届かず

ちいさく笑みを浮かべ
まどろみに隠れて

旅立ちは明日のコインへ
眠りは昨日の午後へ

響き続ける頭のなかの
音のしない叫び声

決まりごとは掌に
厄介ごとは壁のむこうへ

だれもが歩いている
歩みを超えて歩いている