過去を游ぐ魚

過去を游ぐ魚が
ぼくの部屋へ訪れる

それは夜中
眠りが深くなった頃
魚は游ぎ
時空を動かす

そして
ぼくの足下から
するりと入りこみ
現在のぼくのからだを確かめる

それから
ぼくのからだに同化する
魚はぼくのからだと同化して
過去に着き
過去を游ぐ

時間にして
数分の出来事

ぼくは何も覚えていないし
気が付くこともない
しかし
魚は過去を游いで
今に消えていく

ぼくは確かめる
朝日によって目覚め
朝の雨に狂わされ
ぼく自身をさまようように
少しずつ少しずつ
消えていき消されていく

ああ ああ あああ
ざざ ざわざわ ざわ
過去を游ぐ魚よ
ぼくになるといい