男はスーツを着ている
頭にいかにも頭らしいものを乗せて
胸には大人に似たハンカチをさし
男は足を長くして、長くして
手の爪をいやらしく伸ばし、伸ばし
男は女を知っていると云った
酒は随分まえに手懐けたとも云った
地上から眺めても
それは実に憎たらしく
よって、空高くから眺めることにする
しかし、その憎たらしさは際立っている
こちらの考えが瞬く間に埋もれていく
あらゆるものをすり合わせろ
ものごとはわずかながらも表裏一体だ
男は通りを歩いている
夜に、夜という街を歩いている
もう決して、振り向かない
憎たらしくもない
地上から眺め
あるいは空高くから眺め
自らをわずかに見つめる
自らをわずかに殺せ
臆病をわずかに信じて
朝に目覚めて、目覚めて