シベリアヒナゲシ

結局そこには
なにも見つからないことの充実があって
哲学書を置いて
取り扱い説明書は捨て
辞典だけを机の隅に置いた

ぼくらは
眠気すら管理されているから
ペンを選んで紙を汚すのだろう

美しいチョコレート
家族という形ある物語
語弊が生んだ皮肉
当番制の冗談

それらすべてを並べて眺め
なにひとつとして満たされないと知った

傷ついた手のひらより
ぼくのひとつを包んでほしい
たったひとつのかなしみだけを