雪、白く

朝から
いや、正確には午前11時ころから
ストーブの前を離れられずにいる
からだどころか
部屋すら暖まらない
起き抜けに携帯電話の電源を切ってみた
なにもなくなればいい
そんな孤独からの行為ではなく
愛すべき休日を迎えるため
ぼくらのからだのほとんどは
ことばで構成されているから
携帯電話なんぞ必要ない
なんてエゴだ
でもぼくは電源を切った
自分を感覚だけにするために
雪が庭の木に積もっている
否応無く変わってしまった姿
といっていいものか
重さがつらいのだろうか
化粧の気分だろうか
厚手の靴下に履きかえた
一向に暖まらないからだ
暖まったのはストーブだけではなかろうか
こんな日はわくわくする
雪が空白に見えるから
雨も空白をあたえるが
どちらかというと雨は静かな旋律に近い
ゆるやかな伴奏
この空白の時間に充実はいらない
世間体も色恋も
エロスもファンタジーも
使っても使っても有り余る思考
おそろしい
しかし、あいらしい
真っ白は白すぎるゆえに
からだにわるい
げどくなんてできない
侵入されて、もしくはしてしまって
乗っ取られたことにも気がつかずに
白く、ただしろくなって
からだが熱を帯びなくなって
停止。
手元の珈琲を
雪のうえに撒いた
複雑なんてなかった
むしろ同じだった
なにもかもが
ゆるやかな経過をたどっている
そんなに白くさせたいのか