言葉の枷

ぼくはどこを歩いているのだろう
頭のなかに凝り固まった
あらゆるものの考えが
ぼくを得体のしれない大地を歩かせる
電車に乗れば共有を保つ
駅を出れば影のない個々
損得のない未来は
永遠の平等は
争いのない日常は
どれもこれも
夜を狭く深くさせる
そして朝を小さく霞ませる
昼には偽わりなき偽わりが
ぼくたちは一生のうち
どれほどの思考を与えられるのだろう
ぼくはまだ見知らぬ荒野を歩く
気持ちのよい風の吹く
広く豊かな草原であると思い込みながら
しかしどこかで知りながら
ひとつの失敗が
あるひとつの定義に変わる
腹立たしさも忘れ
悲しみを創られた物語で思い出し
笑顔を嘲りで強制する
戸惑うこともあるだろう
挫けることもあるだろう
心の奥底から自らを抉られよう
無意識を意識するようになった
美味しいを美しく感じなくなった
綺麗を素敵だと定めるようになった
ぼくは立ち止まる
前後もわからなくなり
平衡は昔のことのようだけれど
ぼくは自分の掌を見つめ認識し
自らの眠りへと誘われていく
散りばめられた言葉の枷によって
意味を孤独にした
人々を
木々を
砂を
空を
まるごとすべてを
ぼくは見えているのだろうか
なにも願ってなどいないのだろうか
終わりを創ろうとしているようで
感情を与えられ
思考を学び
知識を知り
理性を授かった
ぼくらは今を歩いていく
なにもなかったことに目を瞑りながら
ぼくは今に歩いていく