入り日

大気圏を越えて
汽笛が聞こえた
大小の枕を並べたベッドに
寝転がって束の間の睡眠
その束の間の夢
僕のとなりには
はじめましてのジョージと
ひさしぶりのサヨコと
無口だけど人のいいタカシがいて
携帯電話の電源は切ったはずだよ
と、はじめましてのジョージが言って
なんだか眠くなっちゃった
と、ひさしぶりのサヨコが言った
無口だけど人のいいタカシは
相変わらずルービックキューブに夢中で
肝心の僕の声は煙に紛れてしまって
うまく響いてくれない
赤いシートのボックス席
窓の向こうには白けた目をしたカモメ
とりあえず甘くて酸っぱいコーヒーが
同じカップにそそがれていて
もうすぐ1時間は経つだろう
と、僕は何度目かの溜め息のあとに思って
それについて
無口だけど人のいいタカシは
口元をかすかに曲げて
最後の色を揃えようとしていた
大気圏を越えた雲のイメージは
遥かに尊い気がして
あのときこうしていれば
今頃はこうなっていたのに
という答えのない問いかけは
もう既にどこにも転がっておらず
大小の枕が並んだベッドの上に
メールを知らせる携帯電話が鳴って
太陽が左手と右目だけを照らしていて
僕は小さくからだを丸めた
なるべく音のしない方法で