人々のなかで

みたことのない顔がある
みたことのあるような顔をして

まっすぐ前だけを見つめる女
手を絡ませる女

がに股でゆっくりと歩く男
手を絡ませる男

甘い香り
柑橘類の香り

いったいどこへ
いつからそこに
だれがわかって
だれがわからない

複雑で奥行きをなくした景色
みたことのない顔によって
焦燥と不快を混ぜ合わす

時間が動き始める
確かに握りしめた時間が
また騒ぎだす