ポエム

あるときしょうねんは

ことばのことをポエムとよんだ

たとえとしてではなく

てをふり

さけんで

よんだのだった

ことばはけっしてふりむいてくれなかった

しょうねんはかなしみともちがうふしぎなかおして

いえへとかえっていった

そのひしょうねんはよなかまでなやんだ

ぼくがおおきなこえをだしたから

おどろいてしまったのではないか

もうぼくのまえにきてくれないのではないかと

ときおりなみだをうかべなやんだ

でもしょうねんはなみだをながすことはしなかった

めのなかになみだをためるだけにとどめたのだ

そしてあくるひ

いつもよりねぶそくなまま

しょうねんはさんぽにでかけた

てをふり

さけんで

よぶのではなく

ことばがぼくのまえに

そっとあらわれるときをたしかめるために

いつもよりおおきなほちょうであるいた

ためこんだなみだを

あさひにむかってながすためにあるいた

だけどことばは

あさひになんていなかった

しょうねんはあさひをせにして

いえへとかえりながら

しょうねんはいまではない

じぶんじしんにむかって

ゆっくりときこえないことばをつぶやいたのだった