りんごをひとつ、なんて。

ああ、どこかに行ってしまった
気がついたら眠りのように
どこかに行って
どこかに留まってしまった

地球の裏側に
ゆっくりと狐を描くと
そこにはまるで
大切な宝物が小さく折り畳んで
隠されていたのだった

ああ、ぼくはきっと此処だったのだ
気まぐれにささやいたのは
愛する気持ちではなくて
愛した記憶に過ぎず

素見しに食べた
チョコレートアイスに
想像の一端を感じて
間違いなく指は動き
間違いなく物事は進んでいると知った

こうしてみれば確かに
ぼくはりんごを丸々ひとつ
食べたことなんてなかったけれど

たとえばそんなたいしたことない物事が
少しずつ欠けてきたのなら
ぼくはどこまでもどこまでも
偏屈な小人だろう

あくまでも
なにもなかったような
妄想のなかの話

そして、それが所謂
現実の問題であったりする