愛ではなく恋

くちのなかにある粘り気を夢のなかで感じる朝

とても現実とは想えないほどの現実

ふとかすめたいくつかの悲しみ

それを整理する間もなく朝日は此処へ侵入する

酸味の効いたグレープフルーツ

発酵しかけのヨーグルト

かちかちと音のするスプーン

それは愛ではなく恋だった

僕の耳元でそっと語りかけた

昨日のアルコールが胃の中に少しだけ残っているような感覚

これはやはり現実なのだと認識せざるをえない

握りしめようとしたその手を

宙にかざし見つめる

少しだけ爪が伸びていた

真っ白な部屋のなかにいること

それは愛ではなく恋だった